住宅の屋根板金とは?劣化のサインや修理にかかる費用など、修理をおこなう前に知っておきたい屋根板金の基礎知識

住宅の屋根に設置され、雨水の侵入を防いでいる板金。
大切な役割を担っている板金ですが、常に雨風にさらされているため、徐々に劣化し、最終的に「雨水の侵入を防ぐ」という大切な役割を果たせなくなってしまうことも…。
そうなってしまわないためにも屋根の板金は定期的に点検する必要がありますし、劣化が進んでいる場合は修理をおこなわなくてはいけません。
この記事では、住宅の屋根の板金工事について紹介していきます。
板金に見られる劣化の症状や修理にかかる費用、修理を依頼する業者の選び方などについて解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
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屋根の板金とは?

屋根の板金は、住宅の屋根に備わっている金属部分です。
金属製の屋根材が使用される金属屋根の一部として、屋根材と屋根材の結合部を覆う形で設置されています。
(1)屋根板金の役割
屋根板金は、住宅の内部への雨水の侵入を防ぐという重要な役割を担っています。
金属屋根は屋根材を複数設置する形で形成されていますが、結合部にはどうしても隙間ができてしまいます。
この隙間を放置したままになっていると、雨が降ったときに隙間から雨水が侵入してしまうため、屋根板金でフタをし、雨水の侵入を防ぐわけです。
また、風によって運ばれる細かなゴミや虫、小動物の侵入も防いでくれています。
(2)屋根板金の種類
ひとくちに屋根板金と言っても、その種類はさまざまです。
代表的な屋根板金を3つほど紹介していきます。
切妻屋根など、日本の住宅の屋根は三角形のような形になっているものが多いですが、その三角形の頂点を覆う形で設置されているのが、棟板金です。
屋根材と屋根材の結合部分である頂点の部分からの雨水の侵入を防いでいるのが、この棟板金になります。
棟板金は、屋根の頂点部分にあるということもあって雨や風の影響を受けやすく、劣化する可能性の高い屋根板金だといえます。
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谷樋板金は、棟板金とは逆に、屋根の谷となる部分を覆うタイプの屋根板金です。
屋根の種類や形状によってはこの谷樋板金がない場合もあります。
屋根の谷部分は、雨が降った場合に雨水が溜まる箇所となっているため、谷樋板金は非常に重要な役割を担っている屋根板金です。
また、雨水が溜まる場所に備わっているという特性上、劣化するスピードが早い屋根板金でもあります。
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水切り板金は、雨押え板金とも呼ばれる板金で、屋根の軒先や住宅の外壁との間に設置されるタイプの板金です。
軒先に設置される場合は、雨水が屋根を伝って外壁に流れないようにするために設置されます。
また、外壁との間に設置される場合は、屋根と外壁の隙間からの雨水の侵入を防ぐ目的で設置されます。
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屋根板金が劣化したときに見られる代表的な症状

屋根からの雨水の侵入を防ぐ屋根板金は常に雨や風にさらされているため、徐々に劣化していってしまいます。
屋根板金が劣化すると住宅の内部に影響が出てしまうため、すぐに修繕しなくてはいけません。
そこで知っておきたいのが、屋根板金が劣化したときに見られる症状です。
代表的な3つの症状について解説していきます。
(1)棟板金を固定している釘が抜ける
屋根板金の一つである棟板金は釘で固定されていますが、板金が日光の熱で膨張すると、板金を固定している釘が押し出され、抜けてしまうことがあります。
板金が膨張して変形してしまっていること自体もよくありませんが、釘がゆるんだり抜け落ちたりしてしまうと、板金が浮いて雨水が侵入しやすくなったり、風で板金が飛ばされてしまったりするので、早めに修繕しなくてはいけません。
棟板金はサイズも大きく重さもあるので、飛ばされた場合は人にケガをさせてしまったり、車などを破損させてしまう可能性もあります。
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(2)板金内部の貫板が腐食する
棟板金の内部には貫板と呼ばれる板が備わっていますが、板金が劣化したり釘が抜け落ちたりしてしまうと、内部に雨水が侵入し、貫板が腐食してしまうことがあります。
貫板が腐食すると釘を固定する力が弱まり、板金が飛ばされてしまう可能性が高まるので注意が必要です。
また、腐食が進むと雨水の侵入を防げなくなり、屋根材や屋根自体の劣化を引き起こしてしまいかねません。
そのため、この場合も早急に修繕工事を実施する必要があります。
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(3)板金部分にサビが発生する
屋根板金にあらわれる劣化症状の中でも初期の段階にあらわれやすいのが、「サビの発生」です。
最近の屋根板金はさびにくい素材のものが多くなってきていますが、それでも完全にサビを防げるわけではありません。
昔ながらのトタンの屋根板金の場合であればなおさらです。
ただ、サビの発生は劣化の初期段階といえるので、板金自体はそこまで劣化していませんし、貫板に影響が及んでいることはほとんどありません。
そのため、サビ止めを含んだ塗料での塗装で対応可能な場合が多くなっています。
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(4)谷桶板金はゴミのつまりに要注意!
劣化症状というわけではありませんが、谷桶板金の場合はゴミや落ち葉のつまりにも注意しなくていけません。
谷桶板金は屋根の谷になる部分に設置されているため、雨が降ったときに雨水が流れこむようになっていますが、その際、ゴミや落ち葉なども一緒に流れこむことがあります。
雨水と一緒に流れ落ちてくれればいいのですが、流れ落ちずに蓄積してしまうとつまりの原因になるため注意が必要になります。
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屋根板金のメンテナンス工事にかかる費用の相場

屋根板金のメンテナンスにかかる費用は業者によって異なります。
そのため、変に高い費用でメンテナンスを依頼してしまわないためにも、相場を把握し、適切な価格でメンテナンスを依頼することが大切です。
屋根板金のメンテナンス工事の費用の相場について解説していきます。
(1)棟板金釘打ちコーキング工事の費用の相場は「2万円~」
棟板金を固定している釘がゆるんでいる場合や抜け落ちそうになっている場合におこなわれるのが釘打ちコーキング工事です。
ゆるんでいる釘や抜け落ちしてしまった釘を打ち直し、その上からコーキング材でフタをしていきます。
この工事の費用の相場は、2万円~となっていて、高くても5万円ほどでおこなえます。
(2)板金の交換工事の費用の相場は「1mあたり3,000円~」
板金の劣化がひどい場合は、板金自体を交換しなくてはいけません。
その際におこなわれるのが板金の交換工事で、1mあたり3,000円~実施できます。
高くても1mあたり5,000円ほどですので、それ以上になる場合は業者を検討し直した方がいいかもしれません。
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(3)貫板交換工事の費用の相場は「1mあたり3,500円~」
板金が飛ばされて貫板が露出してしまっている場合など、貫板の劣化が見られる場合は貫板交換工事をおこない、貫板を新しいものに交換します。
その際の費用の相場は、1mあたり3,500円ほどです。
高くても1mあたり5,000円ほどでは実施できるので、それ以上になる場合は注意してください。
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(4)板金サビ止め塗装工事の費用の相場は「5万円~」
屋根板金の板金部分にサビが発生している場合は、それ以上サビを発生させないためにサビ止め塗装工事をおこないます。
サビ止め塗装工事の相場は5万円~となっています。
板金の長さなどにもよりますが、10万円以上になることはほとんどありません。
(5)板金周りの清掃の費用の相場は「1万円~」
谷桶板金など、板金や板金の周囲にゴミや落ち葉が溜まっている場合は、板金周りの清掃をおこないます。
この際にかかる費用の相場は、1万円~となっています。
屋根板金の工事には火災保険が適用されるケースがある

基本的に屋根板金の工事は自費でおこなわなくてはいけませんが、修繕が必要になるできごとのきっかけが「風災」として認められた場合、火災保険が適用され、保険料がおりることがあります。
実際に保険料がおりるかどうかについては、申請など所定の手続きをおこなった上で決定されますが、
- 風災による被害と認められる
- 修理が必要になってから3年以内に申請する
- 修理の費用が20万円以上になる
- 代行申請ではなく本人が申し込む
といった4つの条件を満たせば、保険料を受け取ることができます。
(1)火災保険が適用される可能性のある屋根板金の症状
火災保険が適用される可能性のある屋根板金の症状としては、
- 強雨によって屋根板金を固定しているクギが浮いてしまった
- 強風によって屋根板金が浮いてしまった
- 強風によって屋根板金が飛ばされてしまった
などがあげられます。
台風などの強風に棟板金などの板金が耐えられず、変形して浮いてしまったり外れて飛ばされてしまった場合は、火災保険で修理できる可能性があります。
(2)火災保険の申請法
風災によって屋根板金に被害が発生した場合、以下のような手順で火災保険の申請をおこなうことになります。
- 保険会社や保険の代理店へ連絡
- 工事をおこなってくれる業者に見積もりの作成を依頼
- 「保険金申請書」と「事故状況説明書」を記入し、申請に必要な書類を保険会社に送付
- 審査
審査の結果、申請が承認されれば、はれて保険料の支払いがおこなわれることになります。
(3)屋根板金の火災保険の適用をめぐるトラブル
ケースによっては火災保険が適用される屋根板金の修理ですが、火災保険を悪用した工事業者によるトラブルが多くなっているため注意が必要です。
代表的なトラブルとしては、
- 火災保険が必ず適用されると言って契約を迫る
- 火災保険の申請を代行しようとする
- 途中で解約しようとすると、解約金の支払いを迫られる
- 火災保険分だけではまかなえず、追加費用が発生する
などがあげられます。
特に、火災保険を活用すれば無料で修理できるとうたいながら、後々多額の追加費用を請求されるというケースが多発しているようです。
そういった業者は利用しないように気をつけましょう。
(4)屋根板金の修理に火災保険を活用するメリットとデメリット
ここまで紹介してきたように、屋根板金の修理には火災保険を活用できるケースがあります。
火災保険が適用されれば自己負担を抑えることができますし、場合によっては、すべて火災保険でまかなえるという大きなメリットがあります。
一方、申請には手間がかかりますし、保険金を受け取るまで1か月ほどかかってしまうというデメリットもあります。
ただ、火災保険はこういった万が一のトラブルの際に活用するべきものですので、活用できる場合は積極的に活用されることをおすすめします。
屋根板金の修理を依頼する業者の正しい選び方

屋根板金の修理をおこなう業者の中には、悪徳な業者や技術力の高くない業者もいます。
そのため、しっかりと業者を見極め、優良な業者に依頼することが大切です。
屋根板金の修理を依頼する業者を選ぶ際に意識したい3つのポイントについて解説していきます。
(1)実績のある業者を選ぶ
屋根板金の修理など屋根に関する工事をおこなう業者は、技術の差で仕上がりに差が出ます。特に屋根工事では、技術の差により漏水のリスクが変わるため、できるだけ実績のある業者を選ぶようにしましょう。
(2)リフォーム瑕疵保険に登録している会社を選ぶ
屋根板金工事などのリフォーム工事を受ける際、工事を依頼する業者がリフォーム瑕疵保険に加入していれば、リフォーム後に欠陥が見つかったときやリフォーム会社が倒産してしまった場合など、万が一のトラブルの際に損害金を受け取ることができます。
この保険はリフォームを依頼する側ではなく、業者側が加入する保険です。
リフォーム瑕疵保険に加入しているかどうかについては「一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会」の公式サイトで確認できますので、事前に確認しておくようにしましょう。
(3)地元の業者を選ぶ
屋根板金の工事を依頼する業者には、地元の業者がおすすめです。
長年その地域で愛されている業者には優良な業者が多いですし、口コミなどの情報が集めやすく、客観的に評価しやすいというメリットもあります。
実際に工事を依頼するかどうかの判断は、相談した際の印象や見積もりの内容を加味して決めるべきです。
まずは地元の業者へ、工事の相談や見積もりの依頼をしてみましょう。
(4)火災保険を使うときのメリット、デメリットを教えてくれる会社を選ぶ
屋根板金の修理には火災保険が適用できるタイプのものもあると紹介してきましたが、そのことをしっかりと説明してくれるかどうかも、良い業者かどうかを見極めるポイントになります。
良い業者は、火災保険を使えるタイプの修理かどうかをこちらから聞かなくても説明してくれますし、火災保険を使うメリットやデメリットについても丁寧に説明してくれます。
そういった対応をしてくれる業者を選ぶようにしましょう。
まとめ

住宅の屋根板金は、屋根や屋根材、住宅の内部を雨水から守ってくれる大切な住宅設備です。
屋根板金の劣化をそのまま放置してしまっていると、後々大がかりなリフォームをおこなうことになってしまうケースも少なくありません。
火災保険が適用されるケースもありますので、屋根板金に劣化の症状が見られる場合は、ぜひ一度業者に問い合わせ、修理が必要かどうか確認してみてください。